「 蓮茶作り 」
ハノイにベトナムの国花である蓮を使った宮廷秘伝のお茶「蓮茶」が
今もなお存在しているという。
その幻のお茶が作られる現場を訪れた。


蓮茶の原料となる蓮を採取する池は、
ハノイの中心街からバイクタクシーで約30分ほどの場所。


蓮の花が咲き始める早朝6時〜7時にかけて収穫している。
その時間帯に花が最も強く香り立つからだ。
竹で編んだ籠舟に乗り、
バランスを保ちながら蓮池内で踊るように蓮花を採取していく。
そのしなやかな姿を朝日が照らし、印象的な光景を作り出している。
採取が終わると、すぐさま蓮の花にあるおしべを取り出していく。
まるで皮を剥くように外していくピンク色の蓮の花びらたちが
少しもったいないように感じた。
自然の恵みを贅沢に使う蓮茶作りは時間がキーポイントのようだ。
花の美しさを惜しんではいられない。
その香り豊かなおしべを茶葉と混ぜ合わせることで、蓮の香りを茶葉に移す。
香りを移す方法としては、
蓮池に咲いている蓮の蕾の中に茶葉を入れて一日待つ方法ある。


一日置いた後、香りのついた茶葉を乾燥させる。その作業を3回繰り返す。
これが伝統的な蓮茶の作り方で、
1000本の蓮花で、わずか1kgしか作れない貴重なお茶である。


近代化が進み経済成長が著しい最近のハノイにおいて、
蓮茶を知る人は少なくなっているのだという。
どんなに忙しい毎日の中にいても
優雅にお茶を楽しむ心の余裕は忘れないでいたいものである。
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